財務官と日銀の国際担当理事との会談は昨年8月以来。当時は米国で追加緩和期待が高まるなか、日銀が8月10日の金融政策決定会合で追加緩和を見送り、市場で意外感をもって受け止められた直後の12日に財務官が日銀を訪問。同日夕には白川方明総裁が為替市場の影響を「注意深くみていく」との談話を出す状況となった。結局、日銀は同月末の臨時会合で追加緩和を決める。
1年後の現在、当時と状況は異なっている。日銀は8月4日の定例会合で政府の為替介入に呼吸を合わせるように資産買入基金の増額による追加緩和を打ち出した。白川総裁は「様々な不確定要因も相当に前びろに取り込み、点検して、思い切った金融緩和を強力に行った」と説明し、米金融緩和観測などの高まりなどもある程度織り込んだ措置として、緩和効果の持続性に期待感を示した。
一方、4日の為替介入時点で1ドル=77円前半の水準にあった為替相場は、76円台の最高値圏が定着しそうな気配だ。4日の介入が「主要7カ国(G7)の合意を得られていなかった」(与党関係者)との見方もあり、さらなる急激な円高進行には金融緩和しか打つ手がない可能性もある。月末に米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が米ジャクソンホールのシンポジウムで予定している講演や、来月初めの米雇用統計、欧州のソブリンリスク問題をめぐる動きなど、さらなる円高の引き金となるイベントは枚挙にいとまがない。
与謝野馨経済財政担当相は9日夕の閣議後会見で、日銀の金融政策について「金利はいじっても動かないので、量的緩和の範囲をもう少し考えられるか検討する必要がある」と述べており、政府からの緩和期待が今後も強まる可能性がある。